ハルとナツ 届かなかった手紙 第一回

 NHK放送80周年記念ドラマ。『橋田壽賀子ドラマ』。渡鬼みたいなので冠は不要な気もします。第一回のあらすじは次のような感じ。

  • 北海道の貧困窮乏から逃れ、3年の出稼ぎ感覚でブラジルに移民する一家。9歳と7歳の幼い姉妹ハルとナツもその中にいた。渡航検査でナツに眼病(トラホーム)が見つかったため、ナツはただ一人、冷たい親戚(伯父)の家においていかれることとなる。ハルは残るかどうか逡巡し、出航間近の船から下りようとまでするが引き離される。
  • 月日が流れ、ハルが孫とともに来日し、70年ぶりに姉妹が再会したものの、今や立志伝中の人物にまで登りつめた妹ナツはこれまで全く連絡すらなかった姉ハルに不信感しか抱けず、拒否する。
  • 姉も妹も手紙を書いた(姉は送金さえした)というが、お互いそれを受け取っていない。
  • 姉を拒否したものの手紙のことが気になったは、自分が出たTVを見て連絡してきた従姉妹を訪ね、伯母がお金を抜いたために渡せなかったという手紙を受け取る。
  • それを読んで行くと、渡航前の予想とは異なるブラジルでの過酷な生活が綿々と綴られている。渡航前にナツに渡した農場とは違う農場に送られ、それを知らせる最初の手紙にお金が入っていたため、伯母に隠され、ナツはそのことを知らずに違う農場に手紙を送り続けていたのだった。
  • ハルはナツが立派になっていることに満足し、自分の気持ちに無理やり踏ん切りをつけようとする。しかし、話を聞いた孫のブラジルへの連絡でナツからの手紙が見つかり、ハルは、ナツの境遇を知ることで和解出来るかもしれないと希望を新たにするのだった。

 ドラマのスタイルを一言で説明すればグローバルおしん。そう言っては身も蓋もないが、特にナツのストーリーはほぼおしんそのものじゃないだろうか?また、祖母が孫に語るという枠組みもほぼ同じ。既視感ありありの中で、見るものをひきつけるのはやはり橋田マジックとも言うべき語り口のうまさ。今回終盤に差し掛かり、出来の悪い息子(これもおしんをほうふつとさせる)のセリフで従姉妹の存在をあらわして、次のシーンで問題の手紙を登場させ、ナツが読み進める中で本格的なブラジルの生活描写をスタートさせるあたりはお見事。また、ナツの登りつめ方に代表される小さな謎解きもいくつか提示され、次も見てみたいという気持ちにさせるところは手馴れているとはいえ感心します。

 森光子のメークは米倉涼子を意識したものに見えましたが、考えすぎでしょうか?。米倉涼子はちょっと苦手な女優ですが、最近の評判はいいので確認して見たいと思います。

 とにかくつくりが丁寧で、NHKらしさにあふれた秀作になること間違いないと思います。今週はいろんな特番が重なり、優先順位が下げられそうなドラマではありますが、頑張って全話見ようと思います。