センセイの鞄
久世光彦演出、筒井ともみ脚本の二時間ドラマ。ドラマというよりは映画に近いつくり。柄本明、小泉今日子主演。確かWOWOWで放送されたものの地上波放映。
何の気なしに見始めたんですが、引き込まれてしまいました。原作は未読なのでそれとの比較はできませんが、見ていればすぐわかる久世節とも言うべき世界が物語のテーマとぴたりとはまり、見飽きることがありませんでした。この手の歳の差恋愛を描くと得てして男のファンタジーになっちゃうんですが、関係を丁寧に描いて両方に振れるようなところもよかったです。
特筆すべきは柄本明の演技。極めて抑制の効いた演技の中から立ち上るユーモアのオーラは素晴らしかったです。小泉今日子も37歳というほぼ等身大の女性を好演。
画面はほぼ全編フレアを効かせ(紗をかけたような感じ)、この物語がファンタジーであるということを見るものに意識させる効果をあげていたと思います。
挿入される亡妻との逸話が亡妻役の樹木希林の演技とあいまって、また絶妙。ワライダケを食べてしまうくだりなんて背筋が寒くなるほどでした。
配役の妙も楽しめ、柄本明の息子にベンガルが出てくるところなんて粋な計らいというところでしょうか。エド山口とモト冬樹がいとこ役というのもサービス。
感傷を排除して進んできたお話が最後の最後、空っぽのセンセイの鞄を暗がりで見つめて号泣する月子の顔のアップを一瞬写し、スパッと終わるところも余韻を残して感じ入りました。
久世ドラマとしてはお正月のTBSドラマよりも、数段よかったと思います。