Mの悲劇 第十回

 いろんな事件の連鎖がようやく(じゃなくて唐突に)解明されてきた回。

 いや、ほんとに唐突ですよ。想像は出来るけど、伏線の張り方が思い切り弱すぎる気がする。サプライズっていうのはこういう事じゃないんじゃないだろうか?

 結局『Mの悲劇』の"M"とは”Miss"の"M"ですかね。何かを失った悲しみとそれから生まれる憎しみや悲しみの連鎖ということなんでしょう。

 20年前からの出来事を整理をすれば、

  • 衛の家に泥棒が入り工場の経営が立ち行かなくなる。この泥棒を目撃したことで衛の過剰な自己防衛感覚が生まれる。
  • 衛の父の友人で借金の保証人をしていた明の父が破産状態に陥り、離婚。明は母親に育てられる。
  • 明の父(ここはまだ推測)が離婚後、信用金庫に押し入り、当時警備員だった島谷専務に追い詰められた末、美沙の両親の営むベーカリーに逃げ込み、火をつけ、美沙の両親が焼死。島谷が追い詰めたのは、母親もいなく寂しかった娘の有紀が警備現場に訪ねて来て一瞬持ち場を離れた隙にとり逃がしたことを挽回しようとあせったため。このとき島谷は葬儀の場で美沙に会っている。
  • 母親と住む明は困窮の中、同級生の給食費に手をつけている現場を衛に目撃され、偶然通りかかった先生に連れて行かれる。これが原因でいじめに遭う。(衛を恨む直接の原因)
  • 隙あらば衛に復讐しようと狙っていた明は、衛を大事な商談の場に行かせないように、チンピラを10万円で雇い、襲わせる。しかし、美沙の恋人亘が助け、衛は商談に間に合う。しかし、亘は逆上したチンピラを誤って刺してしまい、罪を着せられ、デビューの機会を失い、失意の中自殺する。
  • 亘を失った美沙は、必ず礼をするといった衛が連絡をとってこなかったことが亘を有罪にしてしまったと判断し、偶然再会した衛への復讐を開始した。
  • (以下おまけ的)有紀と付き合っていた下柳は、有紀から別れを切り出され、衛を困らせようとするが、先にチンピラが衛を襲い、下柳は現場を見ながら立ち去る。
  • 一方、中学時代からの美沙の友人瞳は自分が好きになった人が皆美沙に惹かれて行くことで、うっすらとした恨みを抱いていた。(亘についても同じ状況だった。)衛に好意を抱き始めていた瞳は明から相談に乗るといわれ、明も同じ感じの人間がいるということに共感を覚え、気を許してしまう。(結果として逃亡を幇助した形になる)

 ということなんですが、みんな昔のことを忘れ過ぎって感じですね。特に衛の忘れ方は病的。自己防衛のなせる業かもしれません。お母さんが『育て方間違った』って繰り返し言うのもわかる気がします。

 逃亡する明(蔵之介)の憔悴&キレ演技(および演出)が秀逸。斜光の中で蔵之介の黒目の茶色いところが光って見えるシーンなんて絶妙。お話の内容はともかく、いつもながらTBSの光を使った演出は素晴らしいです。

 次週ついに衛と直接対決ですが、どういう決着にするのか?。返す返すも、伏線の張り方とお話のスピード感が惜しまれる作品ですが、楽しみです。