優しい時間 第五回

 拓郎と勇吉の関係を知ってしまった梓、梓に仕方ないことだがつらく当たってしまったことを悔やんだり、音成が死んだことへのせめてもの自分の心へのけじめとして香典を多く包んだりする勇吉、勇吉をわかってやって欲しいと梓に告げる拓郎、三者の思いと距離がだんだん近づく予感の回。今週のテーマは、遅刻、もしくは第三回に続き、人のエゴの深さでしょうか?。

 先週、ぐっとよかったと思ったら倉本聰は原案に回って、脚本は弟子の吉田紀子さんになってました。(公式サイトだと共同脚本のような書き方になってますが、クレジットでは上記の表記だったと思う)フォーマットがある程度決まっているのでまかせられると踏んだのかもしれませんが、ちょっと残念かなぁ。倉本さんの体調が悪いんじゃなければいいですけどね。

 それで何かが変わったかといえば、そんなに気づくようなところもなく、いつもどおりのゆったりした展開。22:44分ころにめぐみは出てきたし。

 勇吉の感情が、音成の死よりも梓のことに比重がかかっていると見えますが、私には仕方のないことかなぁと思います。勇吉は音成への対応を間違っていたとは思っていない。それは、音成が死んでしまった今でも基本的には変わっていないと思っています。分別のある大人同士の対応だと思っているからです。しかし、朋子が返してもらわなくてもいいからと300万円も渡していたことを知り、若干の後悔をおぼえ、通夜に向かい、香典を多く包みました。でも、その思いは遅すぎて、音成の妻から返されてしまいます。記憶喪失の男(実はサラ金の取立て人)も、リストラされ、拾われた業者の人間として、自分としては正しい業務を行っていたはずなのに、音成が死んでしまい、せめてもの償いにと通夜に向かいますが、それも遅すぎる対応でしょう。どちらも、第三回の粘着蔵之介同様、自分のエゴを満たすための行為でしかなくなっていると思います。梓はまだ分別もついておらず自分の理解を超えているし、音成の死によって梓の死も連想され、その分思いがかかったということでもあるでしょう。

 通夜の帰りに森の時計で一服する常連客が香典の額で軽口をたたきます。このあたりも倉本聰の残酷な一面がよく出ていたと思います。多く包んだことを黙っている勇吉よりも、人に話すことでさらに自分のエゴを満たそうとしている人々。人はそういうものだと倉本聰は言いたいのでしょうか。

 今週の突っ込みどころは、なんと言っても危険な滑るエントランスを放置する従業員。ファンタジックな展開ですんでいますが、リアルな世界では賠償問題ものですね。もう一箇所挙げれば、拓郎が起こした事故はめぐみが絶対悪い。運転中の人にあんなことしたら事故を起こすに決まっています。

 結局、朋子の説得や、拓郎の電話もあり、梓は森の時計に戻ります。しかし、拓郎の本当の気持ちはわからないまま、次週はDQNなおせっかいをしてしまう模様。ここから少しスピード感が出てきそうな気がします。