アイ’ムホーム 遙かなる家路 第四週 第五週(最終週)

 最終話がちょっとトンデモ展開になりかけましたが、今期最も心に響いたドラマになりました。5回見れば済むというお手軽さもあるんだろうけど、脚本と演出と演技がうまくかみ合った秀作だと思います。

 第三週の終わりで、元妻が倒れ、ガンだと診断される。いまだに再婚した妻子についての記憶が戻らず、家庭生活に違和感を感じ続けている主人公は、新しい父(浮気してる)になじめない前妻との間の娘のことが心配でしょうがない。また、今の妻の父から銀行を辞めて会社を手伝わないかといわれても、今の自分は自分を買ってくれていた当時とは違うと断ってしまう。今の妻との間にできた息子と一緒に出かけたデパートで娘がちゃらちゃらした男についていくところを目撃した主人公は、息子を待たせてそれを追うが、その隙に息子がいなくなる。息子は無事知り合いの人が家に送り届けていてくれたが、妻は限界を感じ始めていた。反省して、早く帰ると言った日も娘からの電話で家にまで上がりこんでしまい、間の悪いことに出張中の新しいお父さんが帰ってきてしまう。帰る主人公に、前妻の娘もついて家を出て、ホテルにその日は泊まる。翌朝携帯が不吉に鳴る。(第四週)電話は前妻の容態急変の知らせだった。病院に駆けつける一同。手術が終わるまでの間に主人公と新しいお父さん、前妻の娘は和解し、手術を終えた前妻も主人公を赦す。そして、今の家族を大切にするよう主人公を諭す。やり直すつもりで今の家以外の鍵を捨て、帰宅すると妻は家を出ていた。電話で呼び出された主人公は、妻から結婚のいきさつや前に見つかった離婚届は自分が送ったものであること、そして主人公が火事の中でとった電話で妻は離婚せずにやり直したいと電話していたことなどを聞かされた上、離婚届を手渡される。どうしても今の妻子のことを思い出したい主人公は医師を訪ね相談するが、医師はチベットの砂曼荼羅を見せ、人の記憶も同じようにいくら積み重ねても一瞬にして崩れ去るものだと諭す。主人公はネパールへの出向を命じられる。家に帰ると妻子が戻ってきていた。しかし、ネパールには一人で行くつもりだ。ささやかな歓送会が行われ、前妻の娘とも会ってすっきりした気分で帰宅すると自宅が火事に。飛び込み、妻と息子を救い出そうと戸口まで運んだところで意識が途切れる。目覚めると病院のベッドの上。ふらふらと病院を抜け出した主人公は、前妻の家の前や海岸をさまよい、火事の現場に戻る。そこで、燃え残ったアルバムなどをめくるうちに、記憶が蘇る。自分も家族とやり直したいと思っていたのだ。しかし、遅すぎたと落涙する主人公の前に妻子が。主人公は家族と共にネパールへ旅立つ。(第五週)

 最後の放浪シーンが評価の分かれるところ。素直に見れば主人公はぼんやりした意識の中で妻子が死んだと勘違いし、自棄になってさまよったと捉えるべきでしょうが、病院を出てから着替えたり、どれくらいの日数が経ったのかということも分かり難かったり、火事現場にそんなに容易に入り込めるんだろうかと訝ったりという引っかかりポイントが多くて混乱しました。ひょっとしたら意識が戻るまでの主人公の幻想かしらとも思いましたがそういうフォローもないので、素直に見るべきなんでしょうね。

 時任三郎の、記憶があいまいでどこか自信のない主人公の演技がこのドラマを成功に導いた鍵だと思います。他の役者さんでここまで見せてもらえるだろうかと考えると結構難しい。時任三郎は心にいつも牙を潜めている役柄が多いので、今回の記憶を失う前のイメージが無理なく伝わるいいキャスティングでもあったと思います。また、星井七瀬がフレッシュな演技で◎。大阪ならではの内場さんや石田さんもいい味出してました。脚本も多めのエピソードを手堅くまとめていたし、演出面では夜やロケが多い内容にもかかわらずクオリティの高い画作りで見せてもらえたと思います。

 この枠はきちんと見ようと思わないと辛い時間帯ですが、週刻みの再放送でそのハードルを下げてくれているのがうれしい配慮です。次のやつも面白そうなので、見てみようかな。