オレンジデイズ 第一回

 千倉北川先生の久々連ドラ。あらすじは公式のこちら。感想から書くと非常に安定感があり、北川節に衰えを感じませんでした。というか、前作?の「空から降る一億の星」が個人的にはあまりに期待はずれで、失望していたのでその反動かもしれません。「空から〜」はある意味、自己のジャンルを越えようという挑戦作で、見事に失敗したという印象です。今回はもう、北川世界というか北川宇宙というかの範囲内で、手ごまを動かしている感じがあり、余裕綽々といった印象です。

 ただ、気になる点をひとつだけ。今回は聴覚障碍者をヒロインに据えていますが、この設定って絶対必要なのか?ということです。北川さんは聴覚障碍者の恋愛については今も記憶に残る「愛していると言ってくれ」で、見事な作品を作り上げた実績があります。相当に理解もあるだろうし、関係各所への配慮も怠りないでしょうが、再度、男女の交代はあれ、「素材」として扱う意味があるのでしょうか?今回の扱いは「素材」の「要素」としての意味合いしか感じられないのです。「愛している〜」から、約10年。聴覚障碍者を取り巻く環境が変わったのでとか、「愛している〜」で言い尽くせなかったことがあって、どうしてももう一度書きたくて、とかそういうことが伝わってこないのです。これについては公式サイトで植田Pが

沙絵は、音楽の才能があって、だから、大きな夢があって……でも、障害が生まれて、その夢をあきらめざるを得なくなったという運命を背負った存在なんですね。
だから、その2人が出会うことによって……そして、沙絵と他のメンバーが、出会うことによって、お互いに変わっていく。
とか
バリアフリーになった。ずいぶんと。まだまだ、途上なんだけど、僕たちの意識も変わった。
オレンジデイズに出てきている若者たちは、十年前では、考えられないくらい、沙絵の障害を、ひょいひょいとのり越えていくんですよ。それを描くことがね、このチームが、今、このドラマをやるという意味なのかもしれないですね。

とか書いていますが、初回からはそういったものが伝わってきませんでした。たとえば、「愛している〜」のころには、まだ携帯電話が普及しきっていなかったので、移動時のメールコミュニケーションができなかったのですが、今や、それが当たり前です。としまえんでのすれ違いシーンだって、メールで事足りさせることが可能なのに、なぜそうしなかったか?同じインタビューで

でもね、北川さんのドラマで、もういっぺん手話をやるっていうことに関しては、北川さん自身とディレクターの生野さんは、ものすごく、抵抗があったみたいです。すごく、大切な作品じゃないですか。『愛していると言ってくれ』って。

という抵抗感が今ひとつ登場人物への愛情の欠如として見え隠れしているように感じます。また、植田Pの言うように人の気持ちは変わったのでしょうか?。北川さんは変わらないものと変わったものを表現するため駄目押しで、翔平の妹あゆみの足に障碍を持たせ、割と丹念に描写していると見ました。

 ずいぶん長くなってしまいました。まだドラマは始まったばかり。この先、いい意味での裏切りもあるかもしれません。ドラマにおける障碍のスタンスのとりかたについての不安が、杞憂であればいいのですが。

 拡大枠だったので、少々演出(編集?)に冗長さが見られましたが、手堅くまとめたという以上の充実した導入回だったのではないでしょうか。

 以下気になったことを。

 翔平(成宮寛貴くん)に女の子を振る口実で「自分はゲイだから」といわせるのは反則技です。みんなわかってやっているのであればお見事。

 沙絵の母親が風吹ジュンなのは見事なキャスティング。前世のつながりすら感じます。

 佐伯そよ子役の山田優は常々「めしべが露出したような顔」だと思っているのですが、そこにまた「女を引き込む底無し沼顔」の翔平(成宮寛貴くん)が絡むので、これもまた見事なキャスティング。なかなかエロくていいシーンでした。

 どうしても好きになれない小西真奈美以外は非常にいい配役で、それだけでも安定感があります。

 このままいけば結構視聴率が伸びそうですが、気になる点が私の杞憂に終わることを望みます。