タイガー&ドラゴン 最終回

 自宅マシンを壊したり、風邪をひいたりしているあいだに日にちが経ってしまった。

 最終回は、師匠を裏切り会わせる顔がない虎児とさまざまな思惑で素直に虎児を許せないどん兵衛の間を竜二がとりもつさまを『子は鎹』とシンクロさせて描く回。

 虎児と竜二の出会い(=デスキヨシに遭った時)の重要な小道具たる『ナン』絡みでお話を締めくくるあたり、タイガー&ドラゴンという題の大作落語を見終わった気分です。今回はお話自体をきっちりと落語としても描こうという気合が入っていたようで、さげの前振り(メグミがナンを食べさせるくだり)をしっかりと語らせ、きれいに落としてましたね。

 放送前に最終回を『子は鎹』で終わらせる必然性について妄想していたわけですが、『子別れ』としない理由が思いつきませんでした。ちょっとストレートだし。一般的に通りのいい方をとったわけでもないだろうし。でナン騒動になっている本編を見ていたら、思わず「『子はカレー』かよ!」と三村突っ込みしている自分がいましたが、駄洒落をそのまま出したのでは奥ゆかしさに欠けるからなんでしょうかね。デスキヨシの場面はもちろん、そういえば銀次郎はいつでもカレーを食べていたことからも、『子はカレー』は当初からの大いなる構想だったのかも知れません。

 最終回は西田敏行の面目躍如たる西田節とでも形容すべき芸風が炸裂して深み?を与えてました。特に組長との対話の場面では、一世を風靡した『今言おうと思ったのにぃー・・・』に代表される独特の振り絞るような甘え口調(『〜んだもん』『〜の』『〜んでしょ』)の多用が魂の叫びとしてこちらにぐっと迫ってきました。どん兵衛西田敏行でなければならない意味をいやでも感じさせられたシーンでした。

 妄想で書いたように、これまでは自分が鎹となってそれぞれの親子を結び付けていた虎児。そんな虎児が最後に竜二のおかげで救われる。危惧していた悲しいラストにはならず、ホッとしました。

 親子を師匠と弟子に置き換えたのは、西田敏行の女装(『寂しいのはお前だけじゃない』を彷彿とさせますね)を見せたいからじゃないかとも思えますが擬似親子を本当の子供が救うという一ひねりしたところも話に深みを与えている要素だと思います。

 虎児が刑務所で覚えた落語の題目をいうシーンがありますが、続編をそのラインナップでやってくれればなぁという甘い期待がよぎったりします。しかし、エピソード的には虎児の戻る場所が林屋亭だけになったので連ドラとしてやるのは難しそう。銀次郎が困って、虎児がやむを得ず助けたりするエピソードでスペシャルをやるのがいいところでしょうね。(こういう推測は大概いいほうに外れる)

 いつものクドカンドラマ同様、終わっちゃってちょっぴり喪失感が残ってます。また早めにこちらの期待を裏切る設定のドラマでお目にかかりたいものです。