タイガー&ドラゴン 第五回

 のんだくれで私生活でも暴力の絶えないどつき漫才師まるおと相方まりもの関係を『厩火事』の噺にたとえて解決しようとする小虎だったが…という回。

 見てない方のために(ここにいらっしゃる方は皆さん見てると思いますが)できるだけネタバレしない書き方をしようとしてますので、わかりにくいところもあるかと思いますがご容赦ください。

 『駆け引き』『転落』『本心を探る試し』『嘘から出たまこと』(ちょっとニュアンスは違うが)といった落語を落語として成立させている要素をきちんと踏まえた上での見事な人情噺。まりもの運命を何度も暗示しつつも、結局はあまりに鮮やかかつ唐突な手つきで見るものを唖然とさせるところなど、前回の感想で『どこかで羽目外したくてしょうがないんじゃないでしょうか』という予感が早くも来たという感じです。

 普通なら小虎のさげがお話の着地点となるところをすっと座布団を引くようにひっくり返す展開。人情噺としてのさげを、漫才のスタイルとしての落ち(君とはもうやっとれませんわ)とダブらせるラスト。ラスト後にぐわっと押し寄せてくる、(虎児と真逆とされる)『両親を亡くした後は笑うか、笑わせるしかない人生をずっと送ってきた』という意味。どれも素晴らしいです。

 ここまではドラマ内で噺を再現させる面白さにばかり目がいってましたが、ドラマそのものを噺として再構成する企みもあるのかといまさらながら試みの偉大さに恐れ入ります。この分でいくと、一回ごとでなく、T&Dというドラマ全体が見終わってみれば大作の噺のようにそそり立って感じられるのではないかと期待しちゃったりもします。(ほめ殺しの高田亭の師匠か?>わたし)

 脚本にどこまで書き込まれているのかはわかりませんが、古田新太の酔った動きはお見事。ちょっとしたシーンにかなりのネタ(ロッキーからデューク更家まで)が盛り込まれている上に予測のできない手足の動かし方が素晴らしいです。このあたり、舞台役者としての本領発揮といったところでしょうね。

 清水ミチコはその芸風からしてドラマに出る際に非常に役柄を選ぶ人だと思いますが、今回の役は不幸そうな顔立ち(失礼)や抑えた物腰がピタリとはまってました。

 先週あたりから古典へのなぞり(反物屋の…とか)を捨てて、市井の人の営みは今も昔も変わらないんだとばかりに現実を生で語るというスタイルを確立しつつある?小虎の語り口はこれで定着するんでしょうかね。

 来週は妾馬(八五郎の出世)。誰が八五郎として幸運を得るのかしら。どこでどう勘違いしたんだろう?来週は明烏。堅物役でどん吉と来ますか。