優しい時間 第十一回(最終回)

 拓郎は刺青を消すために自ら焼いた腕の痛みをこらえながら作品作りを続け、見事な器を完成させる。拓郎はそれを持ち、森の時計を訪れ、勇吉と和解するという回。

 拓郎と勇吉の和解のシーンでは思わず涙を流してしまいました。背筋が震えるような感動というのではなく、本当に"思わず"流れた涙という感じです。

 倉本先生の筆力というのは、物語のつじつまや理屈を超えたところで視聴者の気持ちを知らないうちにわしづかみにして持ってっちゃうところにあるんだな、と改めて感じました。台詞回しや挿入されるサイドストーリーには首を傾げたくなるようなものも多かったですが、そんなことはどうでもいいような気がしてくるから不思議です。天性のペテン師とでも言えばいいでしょうか。

 先週からトンデモおばさんになっている朋子さんが梓にぺらぺら拓郎のやけどのくだりを話しますが、それによる梓の反応は拍子抜けするほど薄いものでした。これは梓が成長したことを示すところなんでしょうかね。

 いつもより15分も早く出てきためぐみは、予想していた別れの言葉を告げるわけでもなく、「いつもこのカウンターから同じものを見ているから」と勇吉を励まします。これは、『いつもそばにいるからもう出てくることもないわよね』という、勇吉離れを暗示するセリフと受け取っていいでしょうか。ラストで、一瞬めぐみの声(なんていってたか聞き取れなかった)(追記:『夢は夜開く』を歌ってた)を聞いたかと思ったら、カップがめぐみの指定席に移動しているのを見て、勇吉はめぐみがもう現れないんだということを悟ったようでした。めぐみじゃなくて、今後は拓郎と向き合っていかなくてはいけないというけじめをつけるいいシーンだったと思います。

 最後まで、森の時計の中での寸劇風のシーンには違和感を覚えっぱなしでした。今回の未亡人と刑事の同居に従業員が反対するシーンもちょっと辛かったです。何だろう。テンポの悪さかしら。

 我が家では、せっかく出来上がった作品を誰かが割るのではないかとひやひやしながら見ていました。特に危ないのは梓。マスターが手にとったり、わりとカウンターの端っこに置いたままにしておいたりするのを見ては、早く箱にしまえとドキドキ。梓が手にとったシーンではもう駄目かと思いましたがBGMの感じでそれはないと悟りホッとしました。

 含みを持たせた終わり方は続編やスペシャルの制作を予感させますが、果たしてどうでしょうか?