砂の器 第十回

 捜査会議の中、今西は今回の事件のあらましを、今西の推測も交えながら語っていく。同時刻、和賀の演奏会が始まっていた。という回。

 ついに和賀の宿命の謎が解かれてきました。前回のレビューでうっかり「冤罪」と書いてしまいましたが、殺人・放火はきっちり犯しているんですね。しかし、今西が言うように、30人殺しは想像以上に辛い「村八分」さらにその下地となっていると思われる「いわれなき迫害」である差別視が惹き起こした悲劇。その悲劇が逃亡・放浪という悲劇をさらに呼び、亀嵩にたどり着いた後もひとごろしの息子という烙印を押された秀夫へのいじめという形で連鎖する。千代吉にとっては自分が関与した「運命」として理解し受容するしかありませんが、秀夫にとっては背負わされた「宿命」。「宿命」は変えられない。だとしたら、捨てて、新しい「宿命」を獲得するしかない。だから秀夫は和賀になるしかなかった。という流れがようやくここまで引っ張ってはっきりしました。

 福澤Dおよびロケハンチームとカメラマンに拍手。いったい全国(ひょっとしたら海外も)のどこからこの場所を選べたんだ、この天気はどうして得られたんだと画面から眼が離せませんでした。空の色を落とすのに、かなりきついフィルターを使っていたり、「いや、これは合成だろう」と疑わしいシーンもありますが、このロケシーンがなければ今回の「砂の器」は成り立たなかったでしょう。新聞記事を使って千代吉を追い詰めるところも効果的だったと思います。

 号泣とまではいきませんが、今週はずっとウルウルしながら見てしまいました。来週、今週に負けない締めくくりを見せて欲しいと思います。
 
 余談ですが、石丸謙二郎さんは乱歩Rでも刑事役だったので混乱します。